「感情のコントロールがうまくいかない」「なぜか同じパターンで傷ついてしまう」
「大人なのに、急に子どもみたいになってしまう自分がいる」
カウンセリングの場で、こんなお話をよく聞きます。
こういった体験の多くは、私たちの内側にいる「子どもの部分」であるインナーチャイルドと深く関係していることがあります。
今日は、スキーマ療法の概念である「中核的感情欲求」をもとに、インナーチャイルドのこと、そしてセルフケアのヒントについて書いてみようと思います。
中核的感情欲求——子どもが無条件に満たされて良い、5つの欲求
スキーマ療法は、ジェフリーヤングによって発案された心理療法のひとつです。
認知行動療法をベースに、より深い「心の癖」や幼少期の体験にアプローチできるよう発展させられたもので、近年日本でも注目が高まっています。
その中で、子どもが健全に育つために「無条件に満たされるべき」とされる5つの欲求が挙げられており、これを「中核的感情欲求」といいます。
① 他者との安全なアタッチメント
安心・安全・愛情・受容・安定を感じられること。「ここにいて大丈夫」「この人は私を受け入れてくれる」という感覚の根っこになります。
② 自律性と有能性の感覚
「自分にはできる」「自分で選べる」という感覚を育てること。挑戦を支えてもらう体験が、自己信頼の土台をつくります。
③ 正当な要求と感情を表現する自由
自分の気持ちやニーズを否定されることなく受け止めてもらえる体験。「あなたの感じていることは大切だよ」というメッセージが、自己表現の安心感に繋がります。
④ 自発性と遊びの感覚
のびのびと楽しみ、自由に自己表現できること。制限なく「ただ楽しむ」という体験が、喜びや生き生きとした感覚の源になります。
⑤ 現実的な制約と自己制御
ルールや社会的な枠組みを、恐れからではなく理解として身につけること。自分と相手の両方を大切にする力の基盤となります。
欲求が満たされると「幸せなインナーチャイルド」が育つ
これらの欲求が、成長の中で温かく満たされたとき、私たちの内側には幸せなインナーチャイルドが育ちます。
このインナーチャイルドは、大人になっても喜ぶ力や楽しむ力、自由に気持ちを表現して動く力の源になります。「もっと自分らしくいていいんだよ」「楽しんでいいんだよ」と、内側から背中を押してくれる存在です。
一方で、何らかの事情で環境の中でこれらの中核的感情欲求が満たされない時は、インナーチャイルドは傷つき悲しみ大人の内側に留まり続けます。
そして、満たされなかったからこそ、そのインナーチャイルドは「気づいてほしい」「大切にしてほしい」「愛してほしい」と求めて声をあげます
。
その声が、今のあなたに届くとき、急な怒り、深い悲しみ、見捨てられへの不安、強い孤独感そういった感情として、あなたの心に現れることがあるのです。
パターンが繰り返される理由
そして、インナーチャイルドが傷ついていると、対人関係の中で同じようなパターンが繰り返されやすいということがあります。
「またこの人に傷つけられてしまった」「変わろうとしているのに、気づいたらまた同じ場所にいる」「なぜ私はこういう人を選んでしまうんだろう」そんな経験はありませんか?
その背景には、人が「慣れたパターン」に無意識に引き寄せられやすいという性質があります。
私たちが最初に経験する人間関係は、養育者との関係です。そこで形成された「関係の型」が、後の親密な関係にも持ち込まれやすい場合があるのです。
「あのとき満たされなかったものを、今度こそ」とインナーチャイルドが求めたとき、似たような状況や相手を無意識に選んでしまうということがあります。これは、その人の意志の問題でも、性格の問題でもなく、心の自然な動きなのです。
だからこそ、「またやってしまった」と自分を責めないでほしいと思います。ただ、このパターンに気づくことができれば、そこから少しずつ、変わっていくことができます。気づきは、変化の第一歩です。
大人の自分が、インナーチャイルドの味方になる
では、そんなインナーチャイルドはどのようにケアして行けば良いのでしょうか。
一番大切なことは、今の大人のあなた自身が、インナーチャイルドの一番の理解者・サポーターになることです。
具体的には、次のようなステップで取り組んでみると良いでしょう。
① 気づいてあげること
あなたの中にいるインナーチャイルドにまず気付いてあげましょう。
どんな様子でしょうか。何歳くらいで、どんな表情で、何をしている姿でしょうか?少
そして、身体のどのあたりにインナーチャイルドを感じるでしょうか。少し立ち止まって意識を向けてみます。
すぐに対処しようとする前に、ただ気づいてあげる、それだけでも、インナーチャイルドは少し安心してくれます。
② 声をかけてあげること
インナーチャイルドに気付いたら、ぜひ名前を呼んであげましょう。
そして大人のあなたからぜひ声をかけてみてあげてください。大きな声かけじゃなくても大丈夫です。
「今日は良い天気だね」「何しているの?」そんな些細なことで大丈夫です。
声をかけたあと、インナーチャイルドはどんな様子でしょうか。少し顔を上げてくれるでしょうか。それとも、まだ背を向けているでしょうか。その反応も、丁寧に見てあげてください。
③ 声をきいてあげること
そしてインナーチャイルドの声も聴いてあげましょう。あなたにその子は何を伝えたがっているでしょうか。どんなことをしてほしがっているでしょうか。「寂しい」「認めてほしい」「愛されたい」「●●がしたい」色々な声が聞えてくるかもしれません。
その聞えた声を「そう思っているんだね」「そう感じているんだね」「言えてすごいね」と受け止めてあげましょう。
インナーチャイルドの気持ちや欲求がみえてくると、感情の意味もやさしくみえてきます。
「なぜあのとき私はあんなに怒ったんだろう」「なぜあんなに悲しかったんだろう」そのわけが、少しずつわかってくることがあります。
③ 一緒に満たしてあげること
日常の中で満たせることは、インナーチャイルドを感じながら意識的に取り組んでみると良いでしょう。
美味しいものを食べる、好きな場所に行く、ゆっくり休む。普段何気ないことであったとしてもインナーチャイルドと一緒に取り組むことでいつもと感覚が違ってくることがあります。
現実的に満たすのが難しいという場合には、イメージの中でインナーチャイルドと対話をしながらニーズを満たしてあげることも有効な方法です。
カウンセリングで一緒にケアする
どうだったでしょうか。この記事をよんで、みなさんのインナーチャイルドはどんな反応をしているでしょう?
インナーチャイルドとの向き合いは、一人では難しいと感じる場面も多くあります。
深く傷ついた部分があるほど、アプローチの途中で苦しくなってしまうこともあります。
そんな時は、そんなときは、無理に一人でやろうとしなくて大丈夫です。カウンセリングでセラピストとの安全な環境の中で一緒に取り組んでみましょう。
一人では辛いことでも、一緒ならできることがたくさんあります。ぜひインナーチャイルドを喜ばせてあげましょう。
