
「カウンセリングを受けてみたいけれど、つらい過去を話すのが怖い」
「嫌な気持ちに触れると、余計に苦しくなる気がする」
そんなふうに感じて、なかなか一歩を踏み出せない方は少なくありません。
実は近年、アメリカを中心に注目されている心理療法の中に、つらい記憶を詳しく語らなくても、苦しさを和らげていく ことを目的とした技法があります。
それが今回紹介する「フラッシュテクニック(Flash Technique)」です。
日本では今年、初めて公式トレーニングが開催されました。
私もベーシックコースとアドバンスドコースを受講し、実際の臨床で活用を始めています。
フラッシュテクニックとは?
フラッシュテクニックは、もともとEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)というトラウマ治療法の一部として、
フィリップ・マスフィールド先生を中心に2017年に開発された新しいアプローチです。
EMDRのセッションの中で、クライエントが圧倒されたり、解離することなく嫌な記憶に耐えられるようにという想いから生まれました。
元々は準備段階で使われていた技法でしたが、単体でも十分に効果があることが分かり、独立した技法として発展・研究が進んでいます。
フラッシュテクニックは、うつや恐怖症、パニック、解離など苦痛を感じる感情やトラウマのような辛い記憶などにさまざまな困りごとに対して用いることが可能です。
ネガティブな記憶との関係を変える
過去のつらい記憶や体験は、私たちの物事の見え方や感じ方に大きな影響を与えることがあります。
特に、強烈な印象を残す出来事であればあるほど、現在の生活の中で似たような状況に出会ったときに、
まるで「あの時の自分」に戻ったような感覚になり、心身が反応してしまうことがあります。
フラッシュテクニックでは、そうした記憶や感情と適切な距離をとり、現在の視点(おとなの自分)から眺められるようになることを目指します。
フラッシュテクニックでは何をするの?
この技法の最大の特徴は、「嫌な出来事を具体的に話さなくてもいいこと」と、「短時間で行えること」です。
カウンセリングに取り組む中で、「何があったのか」を語ったり、当時の気持ちにしっかり向き合うことが必要な場面もありますが、
そのプロセスがつらすぎてカウンセリング自体が難しくなってしまう、そんなことも少なくありません。
その点、フラッシュテクニックでは、つらい記憶を無理に具体的に語る必要がありません。
その代わりに、ポジティブな記憶や、好きなもの・映画・場所など、楽しく魅力的を感じるものを具体的に思い出し語ってもらいます。
そして、話してもらう中で、タッピングやセラピストの声かけに合わせたまばたき(フラッシュ)を行っていきます。
このような取り組みを通して、嫌な記憶に対する感覚がどう変化していくかをやさしく観察していきます。
なぜ効果があるの?
楽しいことを話してまばたき・タッピングをするだけでどうして楽になるの?と疑問に思いますよね。
苦しい記憶や感情に少しだけ触れたあとにそのような動作を行うことで脳の情報処理ネットワークが活性化されると言われています。
すると、脳内でつらい記憶や感情が「今の自分にはもう脅威ではない」と整理・再評価されて、自然と苦しさが軽減されていくとされています。
やさしく一歩すすんでみる
もちろん、すべての方に即効性があるわけではありません。
しかし、「話すのが怖い」「でも何か変えたい」という方にとっては、この技法はとてもやさしく一歩進める方法と言えます。
私自身、実際にカウンセリングで取り入れてみて、他の心理療法との相性の良さや、取り組みやすさを感じていますし、
ポジティブな記憶を思い出しながら進めていくため、「つらいセラピー」というよりも、楽しく・安心しながら取り組める方法だなと感じています。
オンラインでの実施も可能です。ご興味のある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。